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04

「これがその女達?美人だな」

『いいか、花蓮の女だ。外見で油断するな
とくにこの女は特殊な”花”だ。薔薇の名を持つリーダー格。
そしてこっちの女がー』

「ダリア、だろ。天青劇場事件の犯人だ。」

『ああ、ダリアの武器だけ謎のままだ。おまえの役目は、わかっているな?』

「−わかってるさ。」

『いい子だ、あつし。』

 

 

 

 


<天青劇場 周辺>

 

西大寺路を出て、ずっと背後に誰かの気配を感じていた。
アツシはわざと人混みに交じり足早に通り抜ける。
天青劇場にさしかかった頃にはもう誰も自分をつけてる者はいないようだった。

劇場前の公園に入り、電話ボックスを探した。
受話器に貼られた広告のシールに書かれてある番号を逆さまに押す。
2度の呼び出し音の後、すぐに男が電話に出た。

『進み具合はどうだ?』

アツシは周りに視線を移しながら、答える。


「ああ、うまくいってる。」

『武器はわかったか?』

「いいや、まだだよ。そんな気配すらない女だ」

目的を忘れるな、と受話器の向こうの男は言った。


わかっている、と彼は答える。
そしてため息まじりに、電話を切った。

 

 


<Bunch Of Pigs >

夕方になって、尾行担当組の少年が3人戻ってきた。
話を聞くと、天水地区付近でどうやら見失ってしまったらしい。


「昨日、尾行の仕方おしえたデショ。どうして見失っちゃうワケ。」

「でもなー、ダン。あいつ人混みにまぎれちまったから、仕方無いワケよ。」

それもそうかァ、とダンが答え、皆でハハハと笑っている。
尾行を失敗したことを諫めるような 態度は一つもなかった。


  あいつら、ダンの口調がうつってるぞ・・・

彼らの会話を背で聞いていたキジは、少し笑ってしまう。
ダンは少年達に飲み物を出し、少し談笑してからキジの席にやってきた。

「あいつら見失ったんだって。」

「聞いてた。天水地区だろ。ココだよ」

モニタの画面を指さす。
アツシの帰り際、ダンがこっそり彼のポケットに忍び込ませたライターは 位置情報を取れるものだ。
不器用な尾行に気付いても、ライターの意味には気付かないだろうとキジが提案した策だった。

点滅する光を見て、ここは劇場じゃなかったか・・・とダンは思った。


「キジ君、ここはどこかわかるカナ」

「天青劇場。アツシとやらは観劇が趣味なのか?」

「さァ・・・ ここで今夜何がある?」

調べてくれヨ、とキーボードを打つ真似をしている。
キジは仕方無く”天青劇場”と文字を打ち込み、検索ボタンを押した。
調べると、今夜は演目が無いようだった。予定には、こう書かれてある。

”大ホール : フォーラムハウト財閥主催 第12回技術交流会記念パーティ”

「なんだこれ」

「この金持ちが何かパーティを開いているんだろ」

もしアツシが西大寺路に住む少年だったら、全く縁の無い場所だろう。
ますます怪しいな、 とキジは考え込んだ。


「キジィ、俺このパーティに行ってみるわ」

唐突にそう言うと、ダンは店の奥へ入っていった。
あとはダンに任すか、そう思い、キジはもう一度画面をながめた。

 

  ・・・そういえば、少し前にニュースで言っていた殺人事件、
  天青劇場で起こったんじゃなかったっけ。

 

 

 

 

 

 

<シェルの働く店>

「シェルは酒が弱いな。昨日のあれぐらいで酔うとは情けない」

「店長、あなたが強すぎなんです」

店員の男が店長と話している。それをぼんやりと聞きながら、シェルは今日入ってきた服に
値札をつけていた。値札と、店のタグをつけ綺麗に折りたたむ。
それを店の棚に飾っては裏に戻り、また別の服に値札をつけていた。

ロボットのような動きに、店長は二日酔いで苦しいと思っているらしい。


「シェル、しんどかったら帰っていいぞ」

シェルは黙って首を振った。何かをしていないと余計な考えが頭を支配してしまう。
その時 、ふいに店の扉が開いた。

「いらっしゃいませ」

店長が応対に出た様子だったので、シェルは変わらず服の整理を続けていた。
店の裏で新しいダンボールを開けていると、店員がシェルを呼びに来た。

「お、おい、シェル。客がおまえの名前を呼んでるんだけど・・・」

「客?俺を?」

「なんか、変な男で・・・見た目が・・・」

店員は心配そうな顔をしている。シェルは値札を机に置き、店の中へ戻っていった。
入り口を見れば、店長と誰かが喋っている。

よく見れば、サングラスにスキンヘッド。ダン・ヴィ・ロウだった。

「ヨゥ シェル!お買い物に来たゾ!」

「買い物?」

「パーティに出られるスーツが欲しいのサ」

「・・・OK,スーツは二階」

店の二階へ案内する途中、店長が心配そうに見てるので「俺の知り合いです」と一言付け加えておいた。
閉店前だったこともあり客はダンだけだ。

「どんなのがいいんだ?予算は?」

グレーが似合うかと思い、何枚か上着を持ってきた。ダンは一目見て首を振る。

「金髪に合うヤツにしてヨ。あと金は梅水花園に請求しといて」

「梅水花園・・・」

「Mr.トニーが買ってくれるんだってサ。この前ネコちゃんを助けたお礼に。」

「トニーがぁ?」

トニーがダンにお礼を?・・・あまり想像ができなかったので梅水花園に電話してみると
電話の向こうでトニーは「金額はこちらが出す」と言っていた。


  どういう風の吹き回しだろうか。

「とにかく、どれにする。金髪って、ダンが着るんじゃないのか?」

「俺が着るのヨ、だって天青劇場にこのハゲ頭じゃ怪しいだろ。」

「一体何をする気なんだ」

「アツシが天青劇場にいるんだ。で、今夜天青劇場ではフォ・・・なんたらっていう金持ちの
パーティが開かれている。だから俺が様子を見にいくワケよ」

だから金持ちに見えるスーツをくれよ、とダンは付け足した。

  アツシが天青劇場に?

昼間、彼が言った言葉を思い出す。

『もう少し静かにしててくれよ。その話は僕の仕事が終わってからね』

仕事が終わる。そう言っていた。


 

 

「・・・俺も行く。ダン、早く着替えろ」

シェルは焦げ茶色のスーツをダンに手渡し、有無を言わさず試着室に放り込んだ。
店長に支払いの件を伝え、足早に店を出る。

「待てよォ シェル!」

後ろでダンが追いかけてきたが、速度を緩めず歩き続けた。

 

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